クオータ制とは【メリットやデメリット、日本での課題を解説します】

記事更新日:2023年01月18日 初回公開日:2023年01月18日

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女性の社会進出を後押しする「クオータ制」が世界中に広まっていることをご存知でしょうか。クオータ制は男性中心に行われていた政治や会社の運営などに女性を積極的に起用することで、偏った見方や考え方を是正するものです。クオータ制は北欧より広がり、いまや全世界で導入されているジェンダーギャップを解消する画期的な制度です。ここではクオータ制とはどういうものなのか、クオータ性を導入するメリットや問題点などを詳しく解説いたします。世界の人事用語となっているクオータ制の意味をよく理解し、企業の運営や採用活動にお役立てください。

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クオータ制とは

政治における男女感覚差を是正するための暫定的な方策

クオータ制とは男女平等の原則のもと、過小評価されている多数の女性に政治へ参加する機会を与える画期的な制度です。従来型の男性主導による政治ではジェンダーギャップが生じるため、女性の議席数や議員に立候補する女性数の割合を事前に定めることで女性の政治参加を確実に増やす方策になります。この制度によって女性議員の数が増え、働く女性や家計を陰で支える女性を支援する政治が育ちジェンダーギャップを暫定的に解消するものです。

137カ国で実施されている

クオータ制は日本とほぼ同じ面積を持つ北欧の自然豊かな国ノルウェーから2003年に発信されました。人口550万人ほどの国から生まれた制度ですが、2022年には世界の137カ国で採用されています。世界で半数以上の国がクオータ制を導入しており、現在でも採用を検討する国は増えている状況です。男女平等およびジェンダーレスを基本とする国は増えており、日本のようにジェンダーレスと叫びつつもクオータ制の導入に足踏みをしている国は少なくなっています。

一般企業でも取り入れられている

暫定的に政治に取り入れられたクオータ制は一般企業にも広がり、目標としていた一般社会にまで浸透しつつあります。企業におけるクオータ制は、企業を運営する役員や社員を束ねる管理職に一定の比率だけ女性を起用することでジェンダーギャップを是正します。企業運営は政治同様に男性主体で行っていることが多かったため、女性従業員や女性ユーザーの声が通りづらい状況にありました。しかしクオータ制の採用により、企業の中に多様性を認める風潮が芽生えて企業の発展に寄与しています。

クオータ制の種類

議会割当制

クオータ制の種類は「議会割当制」「法的候補者クオーター制」「政党による自発的なクオーター制」の3つに大別されます。議会割当制は議会に参加できる議員の女性割合もしくは議員数をあらかじめ決める制度です。議会割当制では女性議員を確実に目標数だけ確保できるものの、法律や憲法などで厳格に決定されるため導入している国は最も少ないのが現状です。クオータ制の中では最も強制力が強く導入できれば間違いなく女性議員は増えるものの、適任の女性候補者が用意した議席数だけいるかが問題になります。

法的候補者クオータ制

法的候補者クオータ制も法律や憲法にて定めるものですが、議会割当制度に比べると強制力は弱くなります。法的候補者クオータ制では、立候補者名簿に記載される女性の数や割合を決める制度であり、実際に選挙で当選するかは別で国民の意見が決められた議席数に左右されることがないため、議会割当制よりも採用する国が多くなっています。憲法や法律で定めるクオータ制は上記の議会割当制と、この法的候補者クオータ制の2つです。法律で定めることにより強制力は強くなり、単なる努力目標ではなくなるため現実性の高いクオータ制といえます。

政党による自発的なクオータ制

政党による自発的なクオータ制は政党ごとに比率を設定し政党内の規定で定められることから、強制力の弱いクオーター制になりますが最も多くの国で採用されています。憲法や法律で定めるクオータ制は時間ばかりを費やして先に進むことが難しいのに比べ、政党単位で事由に決められるものなので日本でも採用する政党が多くなっています。ただし、選挙結果に直接つながるものではないため導入を見送る政党や女性比率を低くする政党もあり格差が生じているのも事実です。また、他のクオータ制と併用するケースも多く見られます。

クオータ制の目的

男女感覚差を是正するため

クオータ制は男女の感覚差を是正することで女性が生活しやすい社会環境を作ることが大きな目的です。男性主体の政治では男性主体の社会が前提として考えられてしまうことが多く、働きたい女性やキャリアアップを目指す女性を疎外することにもなりかねません。政治分野だけでなく企業の上層部にも女性が多く起用されることになれば、それらの問題が解決の方向に向かうと考えられるため各国でクオータ制が採用されるようになりました。

企業における女性の参画割合

日本は約12.6%と留まっている

クオータ制の割合は各国により様々です。フランスでは同国で同等を意味するパリテ法が2000年に制定され、元祖ノルウェーでも1973年に導入した当初は「50%クオータ制」と高い女性比率を掲げていました。日本では2003年に「2030(ニイマル・サンマル)」という目標を掲げ、2020年までに議員や会社の役員および管理職と専門職につく女性の比率を30%までにすると宣言しました。しかし目標の達成には遠く及ばず、日本企業における女性役員の比率は2021年の時点で12.6%にとどまっています。

クオータ制のメリット

女性の積極登用を促し企業の多様性に繋げられる

クオータ制の大きなメリットは女性を起用する事で企業の多様性に繋げることができることです。現在の世界情勢から考えても企業の多様性は不可欠であり、変化に追従するためにも柔軟な考えと行動が必要となります。従来より続く古い企業体質では新しい考えも生まれづらく、提案があったとしても採用しづらいこともあり、クオータ制を導入することで企業も古い体質から脱却できるのです。さらには顧客となる多数の女性ユーザーへの販売促進になるなど、クオータ制が企業にもたらす多様性のメリットは大きいものと言えるでしょう。

女性のキャリアに対する問題を認識できる

現在では女性であっても男性以上の実力を持つビジネスウーマンが増えています。女性管理職や女性の会社役員などが増えることで、もっと上を目指して自分もいずれは管理職や役員になりたいと努力する女性も増えるでしょう。こうした競争は男性にも刺激を与え、企業全体が活性化します。企業側も女性を軽視することやお茶くみ要員と考えることはなくなり、女性の働きやすい環境も整う好循環が生まれ女性のキャリアに対する問題解決の一助となります。

価値観の多様性が生まれる

多数の女性を指導者として起用することで、本人だけでなく企業としての価値観にも多様性が生じます。価値観の変化および価値観が広くなることで、思いもよらないビジネスチャンスが到来することは少なくありません。傾きかけた経営を立て直すことや、いま以上の収益アップをはかるためには価値観の変化は必須です。そのためにもクオータ制により女性の起用は企業にとって大きな起爆剤となります。弱った企業体質を強靭かつ柔軟な企業に改善するため、クオーター制は大きな威力を発揮してくれます。

クオータ制のデメリット

数値目標が先走り公平な人事評定ができなくなる可能性がある

クオーター制では、まず議席数や議席の比率などが先行するため、重要な人選などは後付けになります。そのため男女平等といいながらも、議席数が既に用意されているため女性優位になることも考えられます。能力よりも女性であることが理由で選ばれることになり、公平な人事評定ができなくなるというデメリットをクオータ制は抱えています。しかし先に申し上げたようにクオータ制は「暫定的な方策」であり、一時的な不公平を生むことは承知の上で導入するはずです。それを乗り越えなければ真のクオータ制に到ることができないことを再確認しましょう。

適切な判断を行わないと逆差別と認識される可能性がある

行き過ぎたクオータ制は逆差別であると誤解される可能性もあります。男女平等を提唱するあまり、女性に気を使いすぎることなどはクオータ制の目的に反するものです。アメリカではヨーロッパ諸国に比べてクオータ制の女性比率が30%以下と低くなっていますが、これは自由の国アメリカならではの考え方が根底にあります。女性優位のクオータ制は自由競争を疎外するものでありアンフェアであると考えるためです。しかし前述と同じで一時的には逆差別のように見えることもありますが、もっと先にクオータ制の大きな効果が待っていることを忘れないでください。

出産などのライフイベントコストが企業の負担となる可能性がある

女性には男性にはできない出産という大きなライフイベントがあります。出産前と出産後には身体を十分に休める必要があり、仕事を休まなければいけません。この間は誰かが代理でポストを埋める必要があり、休んでいる間も会社は動いているため出産後に復帰しても状況が大きく変わっていることもあるでしょう。企業としては常に動き変化を続ける状況に対応しなければいけないため、女性の喜ばしいライフイベントが負担となることは避けられません。しかし女性にしかできない特権を企業の妨げととらえることは女性蔑視または差別とも捉えられます。柔軟な企業の対応が必要でしょう。

企業によっては運用に負荷がかかる

女性には出産の他にも育児や家事などを兼ねることが多く、そのため残業や休日出勤ができないなどということも起こり得ます。現在では男性が代わりに育児をすることも多くなりましたが、まだまだ女性が主体となって育児や家事をしているのが現状です。一分一秒を争うビジネスで女性を重要な席に配置することは企業にとって負担だと判断されることもあるでしょう。また、女性が育児をしやすくするために託児所などを用意する企業もありますが企業の負担となることは間違いなく、国や自治体の補助制度などが今後の課題となるでしょう。

日本におけるクオータ制の課題

政治分野における課題

クオータ制は憲法や法律で定めることで強制力を持つため、目標に掲げるだけでは絵に描いた餅になってしまいます。日本の野党では立候補者数の40%程度を女性に割り当てている政党も多くありますが、肝心の与党である自民党が足踏みしています。政権を維持するためには危険を冒すことに慎重になるので、議席数確保が優先となり女性候補の擁立は限定的となっています。官僚においても派閥のリーダーは男性がほとんどで、顔色をうかがいながらの人事では思いきった女性の起用は難しくなっています。

産業界における課題

産業界においても多様性を確保するということで「ダイバーシティ」などと呼び女性のプロジェクト参画を促す企業が増えています。実際に成功した例なども報告されていますが、海外と比較すればまだまだ発展途上といえるでしょう。日本では政治でも産業界においても、いまだに男尊女卑の精神が抜けきれないでいます。これは日本人に根差す大化の改新によって中国より伝えられた儒教の精神が理由であると言われます。根底にある考え方を変え女性に有利な機会が与えられるクオーター制を導入するには、女性自身からも声をあげて政治や企業運営への積極的な参加を呼びかけていくことが重要です。

まとめ

クオータ制を導入して働きやすい環境を作ろう

クオータ制は世界の半数の国が採用しているように、個々の多様化を重視する現在に見合った国や企業に大きな利益をもたらす制度です。日本では言葉だけで男女平等・ジェンダーレスなどと言ってはいますが、一向に変化することなく世界から後れをとっています。日本人全体の半数以上が女性であるにもかかわらず、男性主体となって政治や企業運営が行われているのはジェンダーギャップのあらわれです。クオータ制の導入によりジェンダーによる格差をなくし、男女の差別なく働きやすく住みやすい環境を作るように努力しましょう。

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